木造4階建耐火建築共同住宅(アパート)

「賃貸住宅」のこと
隊長IKEDA隊長

皆さん、こんにちは!IKEDA隊長です。

今回は、最近木造4階建(耐火木造)の問い合わせがとても多いので、この機会にその理由や魅力、注意点などを含めコラムでも書いて置きたいと思います。まず、木造耐火4階建共同住宅(アパート)について、法律の背景から技術、品質、コスト、当社の事例を含め現時点で整理してみました。

1. なぜ今、木造耐火が進むのか(法律と社会背景)

2021年の法改正により、いわゆる「都市(まち)の木造化推進法」(正式名称:脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律)が施行され、公共建築物だけでなく一般の建築物全体で木材利用を促す方向に大きく舵が切られました。これに伴い、国交省・林野庁を中心に木造化・木質化の促進、技術開発、人材育成が進展。建築基準の合理化検討や、大臣認定の拡充等で、中高層・共同住宅の木造化も現実味を帯びてきました。

脱炭素・循環型社会の観点からも、炭素貯蔵効果をもつ木材の積極利用は、建築分野の重要テーマですし、ESG(環境・社会・ガバナンス)市場の動向という複合的な要因もあります。

林野庁HPより

2. 木造でも4階建が可能になった理由(制度と認定の整備)

建築基準法に基づく耐火建築物として成立させるための大臣認定や告示仕様が整備され、主要構造部(柱・梁・床・壁等)に求められる1時間耐火等の仕様が木造でも選択可能に。木造耐火の設計・施工を確実にするための設計マニュアルや講習が普及し、設計者・工務店で取り組める環境が整いました。結果として、防火地域・準防火地域でも、用途地域・規模条件に応じて4階建の木造共同住宅が選択肢に入ります。

3. 防火地域の従前基準と、木造耐火で広がった可能性

防火地域では原則として建築物は耐火建築物が求められます(建基法61条)。ただし、延べ面積100㎡以下かつ階数が2階以下の小規模な建築物については、準耐火建築物であれば木造建築でも可能での取り扱いが一般的でした。この従前の制度では木造の住宅等はこの枠内で計画されることが多かったのが実情です。現在のここが、木造耐火の制度が整うことによって、木造であっても耐火建築物の性能(大臣認定・告示仕様等)を満たせば、3階以上や延べ100㎡超の規模でも計画が可能になった訳です。すなわち、従来の「木造=小規模」の制約を、木造耐火構造で超えることができるようになった!これは簡単ではありませんが、木造建築物の可能性を大きく広げるきっかけにもなりました。その延長で。共同住宅への波及、防火地域・準防火地域でも、避難計画・防火区画・開口部防火設備を適合させることで、4階建の木造共同住宅が現実的な選択肢になりはじめています。

4. 木造耐火構造技術の要点|防耐火・耐震そして断熱・省エネ性能も

ちょっと細かい話ですが、建築基準法第1条では「建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準」を定め、国民の生命・健康・財産を保護し、公共の福祉の増進に資することを目的とする、と記されていて、すなわち、火災に対する防火・避難の安全と、地震・台風等に対する構造(耐震・耐風)安全を両輪として体系化された法律でもあります。よって、木造耐火4階建の計画はより、防火(区画・開口部・避難)と構造安全(耐震・耐風)を統合的に満たすことが大前提となりますが、ここが、2,3階住宅とは全くことなる技術的対応が求められます。断熱性や、界壁等の音対策も重要ですが、人の生命に関わる防火耐火、耐震耐風設計はとても設計、施工の技術的対応が求められるんです。(特に構造計算はルート2となり、木造3階建てベースの構造計算方法とは異なります。)よって、施工だけでなく設計期間も2,3階の住宅よりは余裕をもつ必要があります。

木造耐火4階建共同住宅(アパート)、では防耐火、耐震耐風性能をしっかり確保しつつ、当然ながら断熱省エネ性能も可能な限り向上させます。過去に手掛けた、GARDEN HILLS 月島(ROEMI-4F)は、東京都の省エネ住宅制度、「東京ゼロエミ住宅」の認証を取得しています。(*この年度は水準制度がない時代)
防火耐火の基準を確保するために壁や屋根、基礎の構成から様々な制限の中での断熱計画となりますが、より断熱、省エネ性能を向上に向けた計画を意識して設計しています。

5. 木造耐火4階建のコストとは安いとは限らない理由とは・・・

RC(鉄筋コンクリート造)やS造(鉄骨造)と比較して、木造だから常に安いという認識は誤りです。特に耐火木造4階では、耐火・遮音・設備・法適合の要件が重なり、単純な単価比較にはならないケースもあります。特に、耐火仕様の被覆・下地:柱・梁・床・外壁・界壁の国の大臣認定仕様に伴う材料・手間。とくに可燃材(木)を燃えない部位にするための石膏ボード多層張りがコスト・手間の両面で効いてきます。

外周部の厚被覆:防火・準防火指定や耐火時間の要件によっては、外周面で内外にそれぞれ4センチ以上の厚い石膏ボードを多層で貼る必要が生じるケースがあります。これにより仕上げ厚も増加するだけでなく、何度も石膏ボードを重ね貼りする、開口部や笠木・手すり・サッシの納まり調整他のディテール手当が多大です。特に石膏ボードは一枚あたりの重量が重く、搬入・揚重・保管の段取りに加え、安全管理(腰痛・墜落等)のための養生・人員配置も必要なんです。RC・Sにはない反復的な被覆作業が各階ごと・各面ごとに発生するんです。また、ビスピッチ管理・目地処理・耐火区画の連結確認など設計や、工事管理も多大になります。。ただし、今後コンクリートや鉄筋のコストUPにより、より木造建築のメリットとなる可能性も高いと考えられますが、イメージだけで木造が安いと思わないことも必要です。

6. コスト減に寄与しやすい(コストを抑えやすい)項目 もある

一方でコスト減に寄与”しやすい(コストを抑えやすい)項目 もあります。RC(鉄筋コンクリート造)やS造(鉄骨造)と比較して軽量化されることで、基礎負担の低減につながります。(建物計画や杭基礎等の計画により異なります)また、開口部が木造用窓出ることなどもビル用の開口部よりはコスト減につながることと思います。

 

7.木造で進める意味|脱炭素・ESGと、職人が輝く現場

脱炭素やESGの観点からも、木造で進めることには技術的・社会的な意味があります。カーボンストックと低炭素施工:木材は炭素を長期に貯蔵しますし、さらにセメント使用量の抑制や現場の省エネ化にも寄与します。国産材の活用と森林整備:国産材・地域材を計画的に使うことで、森林の健全な循環と地域経済の活性化に直結します。また建築木造大工の活躍の場、耐火木造は高い精度管理(被覆・区画・納まり)と技能が要。木造大工が主役となる現場づくりが、若手育成や技能継承にもつながりますし、大工・職人と連携する中小工務店が中高層木造建築に関わる時代を迎えています&レジリエンスと地域力:地元の職人・協力会社とともに保全・改修を継続できる体制は、建物の長寿命化と地域の防災力にもプラスです。

 

8.木造耐火4階建共同住宅(アパート)の事例や現在も計画中そして

木造耐火4階建共同住宅(アパート)は、GARDEN HILLS 月島を機に様々なお問いかけを頂いております。また、2025年9月現在で、中野区で新たに木造耐火4階建共同住宅(アパート)を計画中です。冒頭に記した様に、木造耐火の制度や木造耐火の設計・施工を確実にするための設計マニュアルが進んだことで、これまで、RC(鉄筋コンクリート造)やS造(鉄骨造)の道しかなかった構造方法から新たな建築手法が生まれたことと思います。安価ではないけれど、RC(鉄筋コンクリート造)やS造(鉄骨造)と比較しては取り組みやすくなったこと、脱炭素社会に向けた構造方法として今後更に、木造耐火4階建が増加するものと思われます。私共も引き続き、木造耐火4階建や同共同住宅(アパート)を手掛け技術を磨きつつ、木造建築を手掛ける工務店として対応していく所存です。

*中野区の木造耐火4階建共同住宅は希望が多い場合には構造見学も検討して参ります。

◎木造耐火4階建や同共同住宅(アパート)についてご興味、ご相談事がありましたらお声がけ頂けばです。

 

隊長

 

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