住宅における浸水対策の設計の手引き/JBN理事として

「隊長の気になるニュース」
隊長IKEDA隊長

皆さん、こんにちは!IKEDA隊長です。

今回は、少し前のことになりますが、昨今の夏季におけるゲリラ豪雨や、スーパー台風等の頻繁化をふまえ、隊長自身も策定に携わった重要な浸水ガイドラインについて改めてお伝えしたいと思います。

2018年の西日本豪雨、2019年の令和元年東日本台風、そして2020年7月の九州での豪雨。テレビの画面越しに映し出される、濁流に飲み込まれた住宅の映像を見るたびに、「これは対岸の火事ではない」と感じてきました。これまで浸水被害が報告されていなかった地域でも、突然の被害が起きるようになっています。気候変動の影響による大雨の増加、台風の大型化──こうした変化は、私たち住宅に関わる者にとって、正面から向き合わなければならない現実です。

住団連「住宅の浸水対策ガイドライン作成のための勉強会」への参加

このような背景のもと、2021年1月、一般社団法人 住宅生産団体連合会(住団連)の「住宅性能向上委員会」において、「住宅の浸水対策ガイドライン作成のための勉強会」が立ち上がりました。大手ハウスメーカーから地域工務店・住宅産業団体まで幅広いメンバーが参加し、私はJBN・全国工務店協会の理事として、また当時「JBN情報調査委員会 委員長」として、この勉強会に委員として加わりました。
約半年間にわたり(いや、結構大変だった記憶が・・・笑)、住宅における浸水被害の実態調査と対策について議論を重ね、2021年7月に「住宅における浸水対策の設計の手引き」として正式に発行されました。なお、策定にあたっては、国土交通省 住宅局住宅生産課、国土交通省 国土技術政策総合研究所、国立研究開発法人 建築研究所にもオブザーバーとして参加いただいており、行政との連携のもとでまとめられたガイドラインです。

ガイドラインのポイント──消費者のみなさんにも知っておいてほしいこと

このガイドラインは主に住宅の設計者向けに作られたものですが、これから家を建てる方、あるいはすでに住まわれている方にも、ぜひ知っておいていただきたい内容が含まれています。ここでは、個人的な見解でそのエッセンスをお伝えしますね。

① まず「ハザードマップ」で土地のリスクを確認する

家を建てる・買う際には、必ずその土地の浸水リスクを確認することが大切です。各自治体が作成したハザードマップには、「洪水浸水想定区域」「内水氾濫」「高潮」など複数のリスク情報が記載されています。
2020年7月からは不動産取引時にハザードマップによる水害リスクの説明が宅地建物取引業法の重要事項説明の対象項目に追加されました。つまり、法的にも土地購入・賃貸契約の際に説明義務が生じています。ご自身でも事前に確認されることを強くおすすめします。

② 浸水の深さによって、被害の大きさは大きく変わる

ガイドラインでは、浸水深を5つの区分で整理しています。

区分1(床下浸水)

:床下に水や泥が浸入。換気口からの浸水、設備機器への被害が主。清掃・消毒・設備洗浄で対処できる場合が多い。

区分2・3(床上浸水〜1階天井下)

:断熱材・内装・建具・設備すべてに汚泥が付着。大規模な内装工事が必要になる。

区分4・5(1階天井以上)

:天井材の脱落、外部部材の損傷。建物全体への深刻なダメージ。

床上浸水になると、泥出し・清掃・消毒だけでなく、壁の中の断熱材交換、設備の全交換など、復旧に数百万円規模の費用がかかることも珍しくありません。浸水被害は単なる「水濡れ」ではなく、住まいの機能と住まい手の生活を根底から揺るがすものです。

↑浸水対策を施した例(基礎高を高くした例)

③ 水はこんなところから入ってくる

皆さんは、「しっかりした家なら浸水しない」と思っていませんか?実は、住宅には水が浸入しやすい経路がいくつもあります。

◯基礎の床下換気口・給気口
◯基礎と外壁の水切り部分
◯給排水管・ガス管の基礎貫通部
◯掃き出し窓・勝手口ドア・玄関ドア
◯外部コンセントや外壁貫通部

通常の雨風を想定した水密性能では、洪水時の水圧に対応できないケースがあります。だからこそ、設計段階でこれらの経路を意識した対策が必要になるのです。岡庭建設では、ガイドライン等から得た設計方法を含め、基礎、設備の設計等を含め可能な限り水害、浸水対策を施し、少しでも水害ダメージを減らす工夫を設計施工に組み込んでいます。これまでにいくつもの対策した住宅の事例も。

④ 浸水対策の3つの方針

↑浸水対策を施した例(基礎高を高くした例)

このガイドラインが示す浸水対策の根本的な考え方は、次の3点です。

方針① 住宅内への浸水をできる限り防ぐ
方針② 浸水が防げない場合は、被害を軽減し、早期復旧・継続使用を可能にする
方針③ 命を守るために住宅外への避難を最優先とするが、住宅内での避難(垂直避難)も考慮する

この3つの優先順位は非常に重要です。「浸水しない家」を目指しつつも、万が一の際には「早く復旧できる家」「命だけは守れる家」へと備えを重ねていく考え方です。

↑岡庭建設の設計図書を利用してガイドラインに対策が記載されています。

私たちの住まいづくりへの反映

岡庭建設では、耐震等級3・断熱等級6を標準仕様としていますが、同時に浸水リスクへの配慮も、土地選びや設計の段階からお客様と一緒に考えることを大切にしています。

土地を購入・検討される際には、ぜひ浸水ハザードマップの確認と併せて対策方法を相談ください。また、新築・リノベーションをご検討の際には、「その土地の浸水リスクはどのくらいか」「どんな対策が必要か」という視点を設計に組み込むことが、長く安心して住み続けるための大切な一歩ですから。
隊長も当時の策定委員会を機に、更に建築の水害対策、浸水対策のあり方を知ることが出来ました。大手ハウスメーカーそして、中工務店が一緒になり住宅の安心安全性の確保に向けた半年あまりの議論はとても有益でした。隊長も、岡庭建設で考えてきた浸水対策についても情報提供や委員会でも多く議論した記憶があります。その経験を活かし現在の住まいに大きく役立っています。(ガイドラインには岡庭建設の図を用いています)

住まいは、ただ「快適に過ごす場所」であるだけでなく、「命と生活を守る場所」でもあります。そのことを、私たちは設計と施工の両面から真剣に考え続けています。

隊長

 


参考: 住宅における浸水対策の設計の手引き(一般社団法人 住宅生産団体連合会 住宅性能向上委員会 策定、2021年7月発行)


 

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