災害時に修繕と法律の関係って?

「隊長の気になるニュース」
隊長IKEDA隊長

皆さん、こんにちは!IKEDA隊長です。

災害で家が壊れたとき、応急的な修繕に建築基準法がどう適用されるのか・・ご存じの方は、実はあまり多くないと思います。建築基準法の中で「応急の修繕」とは、非常災害の際に特定行政庁が指定した区域内で、災害により破損した建築物を応急的に修繕することで、この場合は建築基準法令の規定が適用されません。さらに国土交通省の通知によって、この応急の修繕は工事に着手する時期にかかわらず適用除外になることが示されています。

今年も7月に「令和8年熊本地震」が発生し、各地で豪雨の被害も相次ぎました。被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。こうした情報はなかなか目にする機会がないので、隊長自身の備忘録も兼ねてコラムにまとめておきたいと思います。

国住指第27号 災害により破損した建築物の応急の修繕に係る建築基準法の取扱いについて(平成23年4月5日)

↑災害により破損した建築物の応急の修繕に係る建築基準法の取扱いについてが公開されていた

国から通知か・・

国からの通知(専門的には国住指第27号)は、平成23年(2011年)4月5日に、国土交通省住宅局建築指導課長から各都道府県の建築行政主務部長あてに出された通知です。件名は「災害により破損した建築物の応急の修繕に係る建築基準法の取扱いについて」。現在も国土交通省のホームページに、災害等への対応に関連する技術的助言のひとつとして掲載されています。

東日本大震災の発生から、わずか25日後のことでした。本文はとても短く、災害により破損した部分の修繕であれば、建築基準法第85条第1項の規定により、工事に着手する時期にかかわらず建築基準法令の規定は適用されない、という趣旨です。あわせて都道府県に対し、管内の特定行政庁や知事指定の指定確認検査機関への周知を求めています(国が指定した検査機関には、国から通知済みとされています)。

一見すると当たり前のことを書いているようにも見えます。が・・・ここにこそ大きな意味があると感じています。被災地では職人も資材も足りず、「すぐには工事に取りかかれない」という状況が当たり前に起こるからです。職人の人手不足が深刻化する今後、『すぐには工事に取りかかれない』状況がさらに増えることは間違いありません。

建築基準法で何がかいてあるのか・・?

条文にある「その災害が発生した日から一月以内にその工事に着手するもの」という期限は、応急仮設建築物の建築に係るもので、応急の修繕には係りません。通知は、応急の修繕について「工事に着手する時期にかかわらず」適用除外であると明示することで、この点を確認しています。

建築基準法(第85条第1項)では、まず「非常災害区域等(非常災害が発生した区域又はこれに隣接する区域で特定行政庁が指定するもの)内」であることを前提にしています。そのうえで、「災害により破損した建築物の応急の修繕」と、「国・地方公共団体・日本赤十字社が災害救助のために建築するもの、または被災者が自ら使用する延べ面積30㎡以内の応急仮設建築物の建築で、災害発生から1か月以内に着手するもの」が、一続きの文章で並べて書かれています。文章がつながっているので、「応急の修繕も1か月以内に始めないといけないのでは?」と迷う余地があったんですね。

災害で壊れた部分の応急修繕は、着工する時期にかかわらず建築基準法令の規定は適用されないことを示す図解

↑災害で壊れた部分の応急修繕は、着工する時期にかかわらず建築基準法令の規定は適用されません

適用は「非常災害区域等」の区域だけ

この適用除外が使えるのは、特定行政庁が「非常災害区域等」を指定した区域内に限られます。災害が起きればどこでも自動的に、というわけではない点は、ぜひ押さえておきたいところです。

たとえば令和8年熊本地震(7月28日発生、最大震度7)では、熊本市が発災当日の7月28日付で取扱いを公表し、市全域を非常災害区域等の指定区域としたそうです。令和4年の台風第15号等では、静岡県が牧之原市と吉田町の全域を指定したと言われています。詳しくは各地域の情報を確認ください。

2025年4月の法改正で、この知識がより大切に

2025年4月の建築基準法改正(いわゆる4号特例の縮小)で、木造2階建て住宅などの「大規模の修繕・大規模の模様替」にも建築確認が必要になりました。そのため、応急の修繕の扱いを知っておく意味が、以前よりぐっと大きくなっています。

大規模の修繕とは、壁・柱・床・はり・屋根・階段といった主要構造部の1種以上について、過半にわたって行う修繕のことです。改正後は、木造2階建てや延べ面積200㎡を超える木造平屋など(新2号建築物)でこれに当たる工事を行う場合、確認申請が必要になります。

一方で国土交通省の資料では、屋根ふき材だけの改修は大規模の修繕に該当しないものとして取り扱って差し支えない、とされています。外壁も、外装材のみの改修は原則として該当しません。つまり日常的な修理の多くは従来どおりなのですが、災害で構造部分まで傷んだ場合は話が変わってきます。

非常災害区域等の中であれば、応急の修繕には建築基準法令の規定が適用されず、確認申請の手続きも求められません。被災直後に雨風をしのぐための工事を、手続き待ちで止めずに済む。これは住まい手にとって、本当に大きいことですよね。

ただし、どこまでを「応急」と見るかは個別の判断になります。応急の範囲を超える本格的な改修や建て替えには、通常どおりの手続きが必要になる場合があります。ここは私たち技術者が、しっかり確認しなければならないところです。

「法令が適用されない」は「何をしてもよい」ではない

建築基準法が適用されないのは、被災直後の暮らしを守るための特例であって、安全性を軽く見てよいという意味ではありません。隊長が強くお伝えしたい部分でもあります。

応急の修繕は、あくまで「ひとまず住み続けるため」の処置です。たとえば地震で傷んだ家に、もともとより重い材料で応急補修をしてしまえば、余震で被害を広げることにもなりかねません。応急で命と暮らしを守り、落ち着いたら本復旧でしっかり性能を取り戻す。この二段構えで考えることが大切だと思っています。

また、被災後の建物には、名前の似た調査や証明がいくつかあります。「応急危険度判定」は、余震などによる二次災害を防ぐために、応急危険度判定士が建物を調べて「危険・要注意・調査済」のステッカーを貼るものです。一方の「罹災証明書」は、市区町村が住家の被害の程度を認定して発行するもので、各種の支援を受ける際の基準になります。目的がまったく違いますので、混同しないようにしておきましょう。

混同しやすい「災害救助法の住宅の応急修理」との違い

建築基準法の「応急の修繕」は法令の適用の話、災害救助法の「住宅の応急修理」は費用を支援する制度です。名前はよく似ていますが、中身はまったくの別物です。

住宅の応急修理制度は、災害救助法が適用された市区町村で、罹災証明書で大規模半壊・中規模半壊・半壊・準半壊と認定された住宅の、居室・台所・トイレなど日常生活に必要最小限の部分を修理するものです(全壊でも、修理によって住み続けられる場合は対象となり得ます)。応急仮設住宅を利用しないことや、中規模半壊・半壊・準半壊では自らの資力で修理できないことなどの要件もあります。

この制度は、市区町村が修理業者と契約して修理を行う仕組みのため、自分で先に業者へ支払いを済ませてしまうと、対象にならない場合があります。工事の完了期限も、原則として災害発生日から3か月以内(国の災害対策本部が設置された場合は6か月以内)とされ、災害によって延長されることもあります。被災したら、まずはお住まいの市区町村の窓口に相談することが先決です。

被災したときに覚えておきたい備忘録

いざというときに慌てないために、隊長なりのポイントを整理しておきます。

◯自治体のホームページで「非常災害区域等」の指定を確認する
◯被害を受けた箇所は、片付けや修繕の前に写真で記録しておく
◯罹災証明書の申請と住宅の応急修理制度の相談は、市区町村の窓口へ
◯応急修理制度を使う場合は、自分で業者に先払いしない
◯火災保険・地震保険の内容を確認し、加入先の保険会社や代理店に相談する
◯「保険で自己負担なく直せる」という突然の勧誘には、その場で契約しない

最後の点については、国民生活センターも、災害の後に点検商法や高額請求、保険金を口実にした勧誘のトラブルが寄せられているとして注意を呼びかけています。信頼できる工務店を平時に見つけておく事、その他困ったときは消費者ホットライン「188」に相談することも勧められています。被災直後は誰でも冷静ではいられませんからね。以上備忘録を含め皆様の参考になれば幸いです。

隊長

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